はじめに
「子どもをプロに育てたい」と願う親御さんは多いと思います。
しかし、ただ練習を積み重ねるだけでは不十分です。
課題をやり切る姿勢や、体の精度を高める地道な
取り組みこそが重要になります。
今回は、低学年からプロを目指すための
育成プロセスを、わかりやすく解説します。
プロを育てるための指導の流れ
- 体格づくりと成長ペースの理解
- 運動の基礎をつくる
- 技術習得とゲーム勘の一致
- 将来を見据えたプレースタイル設計
- 練習環境の整備
- 18歳までの計画
この流れは、どの選手にも共通する
「成長のロードマップ」です。
体格づくりと成長ペースの理解
テニスの練習環境には、
身長の伸びを妨げる要因が多くあります。
日本では強いジュニア選手に
低身長が少なくありません。
テニスは高身長が有利なスポーツであるため、
最終的にどのくらいの身長になるかは非常に重要です。
そのために次のような取り組みが必要です。
- 遺伝的最終身長を特定する
- 成長曲線・インボディなどによる定期的な測定
- 栄養・睡眠・生活環境の整備
それでも身長の伸びが停滞する場合は、
医療機関に相談し対策を検討します。

目標は、遺伝的最終身長に
+9センチを目指すことです。
運動の基礎をつくる
プロ育成のカギは、身体能力の分析と向上です。
チェックすべきポイントは次の通りです。
- 眼球の動き・機能
- 姿勢・骨格アライメント
- 関節の可動範囲
- 各パーツの正常な稼働
- インナー(体幹)の安定とアウター(外側筋)の強化
- 自重を支える筋力
- 身体の各部位を自在に動かせる神経機能
これらを確認することで、
怪我の要因を早期に発見できます。
特に腰椎・関節・足裏は要注意です。
テニスで起きやすい怪我はある
程度パターン化されており、
要因の特定がしやすいのです。
分析をもとに、次の基本動作を
正しく習得していきます。
- 正しく体を使えているか
- 正しく体を支えられているか
- 正しく走れているか
- 正しく投げられているか
これらが正確な技術習得の基礎になります。
7つのコーディネーション能力
- 反応能力
- バランス能力
- 定位能力
- リズム能力
- 連結能力
- 識別能力
- 変換能力
7つの運動能力
- 筋力
- 持久力
- 瞬発力
- 調整力
- 柔軟性
- スピード
- 敏捷性
※運動の動き作りなどの資料
これらの基礎能力の見極めを怠るケースが多く、
条件が自然と整った一部の選手だけが
“勝手に強くなる”現象が起きています。
技術習得とゲーム勘の一致
現代テニスでは「ゲームベースドアプローチ
(Game Based Approach)」が主流です。
これは「プレーの中から学び、状況判断を養う」
ことを重視する指導法です。
古典的な「フォーム指導」や
「打ち方中心」の練習では、ゲーム性が欠け
ジュニア期の選手ほど“いい打ち方”を
意識しすぎてしまいます。
結果として「上手だけど勝てない選手」に
なりやすいのです。
大切なのは、
「まずゲーム状況から入る」→「戦術を理解する」→
「必要な技術を習得する」という順序です。
この考え方を理解している指導者に出会えるかどうかが、
成長の大きな分かれ道になります。
プロ育成は単純作業の積み重ね
派手なショットよりも、
地道な基礎づくりこそ未来の武器です。
ゲームベースドアプローチで
自分に必要なショットを理解したら、
それをできるまで徹底的に反復練習します。
- 1ステップで2〜3時間かかることもある
- 課題をやり切る粘り強さが最も重要
反復の時間を確保し、
淡々と積み上げることが最大の努力です。
将来を見据えたプレースタイル設計
「どんな選手になりたい?」「どこで戦いたい?」
この問いに向き合いながら成長していく過程こそ、
親子にとって大きな喜びです。
ただし、理想だけではなく、
現実の分析が欠かせません。
自分の身長・体格、
コーディネーション能力、運動能力、
そして「自分の武器」を冷静に把握しましょう。
韓国のイ・ヒョンテク選手は地味なプレーながら、
欧米選手にパワーで劣る分を、
緻密な戦術と安定性で補い、
世界ランキング36位、グランドスラム12回
出場という実績を残しました。

日本では伊藤あおい選手が好例です。
体力よりも戦術を武器に、世界で戦い始めています。

この2人の共通点は
「自分にないものを理解している」こと。
“ないもの”にこだわらず、
“あるもので勝つ”ことに集中しています。
多くのジュニアが、自分の能力を冷静に分析せず、
ビッグ3のようなテニスを目指して失敗するのです。
自分を客観視し、正当に評価して、
そこから戦術を構築することが極めて重要です。
練習環境の整備
どのくらいの時間を、何に
費やすべきかを明確にしましょう。
- テニス練習時間
- トレーニング時間
- 睡眠時間
- 学習時間
- 試合数
全国上位に進むためには、
12歳までに約3,600時間の練習が必要とされています。
加えて1〜2時間のトレーニングも必要です。

短時間で成果を出すには、
プライベートレッスンなど質の高い練習が有効です。
量より質を上げれば、時間を
短縮できることが証明されています。
たとえば、グランドスラム選手を
多数輩出したチェコのクラブでは、
小学生に1時間半以上の練習はさせませんが、
全てプライベート指導です。
また、コーチ選びも非常に重要です。
実績のある指導者か、
選手の未来像を描けているかを確認しましょう。
コーチの質問や意見から未来が感じられるなら、
信頼できる指導者といえます。
試合経験も重要です。
1セットマッチで年間約100試合が理想です。
アメリカでは毎週末3セットマッチの試合があり、
経験値を積みやすい環境があります。

日本ではその分、日常練習後に
試合形式を取り入れるなどの工夫が必要です。
18歳までの計画
計画を立てることは、
プロ育成において最重要です。
プロ選手は年間スケジュールを明確にし、
「いつまでに何ポイント獲得」
「何位まで上げる」といった目標を具体的に設定します。
ジュニアの場合は、成長曲線を考慮しながら、
- PHV(成長期ピーク)の時期
- 第二次性徴の開始時期
- 18歳までに出場すべき大会
をすべて表にまとめましょう。
ナショナルチームでは「何歳で何位」「どの大会で勝つ」と
いった計画を立て、実行しています。
- 18歳までの長期計画
- 1年ごとの計画
- 1週間単位の予定表



まずはこれらを作成し、
「プロデビューは何歳か」を明確にしましょう。
まとめ
ここで紹介した内容は、実際の事例や
ITF(国際テニス連盟)の統計に基づいたものです。
何を行うにも、過去の基準を理解して
計画を立てることが欠かせません。
トップ選手はどれくらい練習し、
どれくらい試合を重ねてきたのか。
その基準を知ることで、
自分の進む道がより明確になります。
世界で戦うプロテニスプレイヤーを目指すなら、
ここで紹介した内容が“必要なボリューム”
であることを、ぜひ理解しておいてください。
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